目指せ!健康スポーツナース

具体的な実践指導「子どもの運動器検診」

健康スポーツナースの仕事の1つ、「運動器検診」とはどのようなものなのかを具体的に説明しています。対象者は子どもから高齢者まで幅が広いのですが、ここでは子どもの運動器検診を例に挙げて紹介します。

具体的な実践指導「子どもの運動器検診」

二極化が進む子どもたち

二極化が進む子どもたち

現在、児童・生徒の健康上の問題となっているのが肥満や生活習慣病の増加、運動過多によるスポーツ障害などです。相反した内容なのに、なぜどちらも問題となっているのでしょうか。それは現代の子どもは「運動をよくする子」「ほとんどしない子」の二極化が進んでいるからです。
文部科学省では「体力・運動能力調査」を行い、児童・生徒の体力や運動能力を計測していますが、1985年頃から体力が低下傾向にあることがわかっています。しかし、単純に体力が低下しているだけの問題ではありません。「雑巾が絞れない」「靴紐が結べない」「スキップができない」といったように身体をコントロールする能力も低下しています。
このような状況を受け、児童・生徒の健全な運動器の発育・発達のために、「運動器の10年・日本協会」では「学校における運動器検診体制の整備・充実モデル事業」に力を入れています。

運動器検診の流れ

運動器検診の流れ

まずは体操服姿の児童・生徒を3~5名ずつのグループに分けます。その後グループごとに、「歩容状態」「下肢変形」「しゃがみ込み動作」「脊椎変形」「肩関節拳上」「肘関節・上肢変形」「肘関節屈伸動作」の項目をチェックしていきます。学校で行われる一次検査で確認が必要な児童・生徒のみ整形外科医の検査を受けることになりますが、健康スポーツナースが担当しているのがこの一次検査です。
これまで実施した運動器検診の結果によると、児童・生徒の運動器疾患推定罹患率は8.3~15.7%でした。そのうち異常が最も多かったのが脊椎変形や下肢変形で、その他に「しゃがめない」など筋や骨格系の運動器が十分に発達していないこともわかりました。また、ケガが完全に治りきっていないのにスポーツを継続し、治療後もケガを抱えている子どもも少なくありませんでした。
成長期にある子どもの運動器は未発達です。過度な運動をしたり、治療後も違和感を抱えたままにしているとスポーツ障害を引き起こしてしまう可能性があります。悪化すると運動を続けるどころか変形性関節症や脊椎症を発症し、成人しても後遺症を抱えてしまいロコモティブシンドロームへ移行することもあり得ます。
学校で行われる場合はどうしても時間的な制限は避けられません。しかし、医療とスポーツに関する知識が豊富な健康スポーツナースが担当することで効率よく行えています。ただし、運動器検診に対する学校関係者や保護者の認識は未だ不十分です。子どもの健全な運動器の発育・発達のためにも運動器検診の必要性を学校関係者や保護者に正しく認識してもらうことが大きな課題となっています。

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